スキップしてメイン コンテンツに移動

Allbirdsの見るこれからのカーボンフットプリントゼロの未来

 



Introduction

Allbirdsは、石油由来の代わりに、植物由来の原料を使用して、より低いカーボンフットプリントでシューズやアパレルを生産するグローバル企業です。今回はAllbirdsのMarketing Directorである蓑輪光浩氏に、Allbirdsの脱炭素への取り組みについてインタビューを行いました。




御社が現在のビジネスを始めるきっかけはなんですか?

オールバーズは2016年にサンフランシスコで誕生した、フットウェアを中心にしたライフスタイルブランドです。創業者はティムさんとジョーイさんの2名です。

ティムさんはもともとニュージーランド代表のプロサッカー選手でした。ニュージーランドと言えば、人間より羊の数が多いことで有名な国です。ウールを使ったシンプルな靴を製造したいと考え、サッカー選手引退後に靴の製造を始めました。

その後、さらにスケールしていくために、バイオテクノロジーエンジニア出身のジョーイさんと出会い、ジョーイさんのサステナブルな手法でプロダクトを作ってBtoCで始めたいという思いと、ティムさんの靴の生産への想いが交わり、サンフランシスコで起業を決意しました。

現在、ティムさんがプロダクト開発を担当し、ジョーイさんがビジネスやサステナビリティの面を担当しています。このように、ティムさんのメリノウールを使ったシューズに、ジョーイさんのサステナビリティに関する考え方やマテリアルを組み合わせていったことが、オールバーズの始まりです。



御社のシューズについてのこだわりを教えてください。

基本的にはシンプルな製品を作りたいと考えています。ただ、シンプルであるがゆえに、プロダクトに対して、クオリティが問われることが多く、簡単ではないと感じています。靴は一般的に、50から100ほどのパーツで構成されており、それぞれのパーツが1グラムとすると、左右合わせて2gになります。それを、何十万、何百万と生産するので、その重さは膨大になります。重さが増えることで、送料にも跳ね返りますし、燃費がアップして環境にも悪影響を与えます。また、パーツが増えるたびに、作業時間やコストも増加していきます。こうしたことを考慮すると、クオリティを保ちながらプロダクトはシンプルに保つべきだと思います。



私たちは孫の世代まで美しい地球を残したいというビジョンを掲げています。ファッションの文脈において、私たちは脱炭素化を進めることを重視し、様々なリニューアルされたマテリアルを使った製品を開発しています。インターネットはもともと軍事や教育などネットワークだったものを、一般の人々が利用できるようになり、多くの人々がイノベーションを起こすことができるようになりました。同様に、ファッション業界でも、私たちが作ったものを可能な限りオープンにして、誰もが使えるようにすることが大切だと考えています。実際には、開発した素材をファッション業界以外にも使ってもらってます。SDGsは17番目のパートナーシップに近いものですが、様々な人々が手を取り合い、一つの方向に向かって協力していることが重要であると感じます。私たちのブランドの目的は、ビジネスの力を使って気候変動を逆転させることです。気候変動を止めるのではなく、逆転させることで、孫の世代まで地球を保護するために、温暖化問題や大量生産の問題を、同じ課題意識を持つ人々と協力して解決に向かっていきたいと考えています。


お客様に多くの靴を買っていただき際に工夫していることはどのようなことでしょう

やはりお客さんが靴を買うときには、サステナビリティだから買うというよりも、自分の服や体に合っているから買うと思います。ですので、私たちは基本的に、製品の品質やサービスに真摯に取り組み、さらにサステナビリティという価値を加えていくという考え方を持っています。


社員さんへのサステナビリティ考え方の浸透はどのようにしていますか

多くの人がAllbirdsのフィロソフィーに共感していて、入社しています。。

また、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、Bコーポレーション(*1)は海外では新しい就職・転職の基準となっており、環境に意識を持った人々が比較的集まりやすくなっていると考えられます。



脱炭素化に取り組むことで直面した困難や課題はありましたか?

課題や困難は非常に多くありますが、環境問題に対する答えが見つかっていないことがあると感じています。ただし、最近では、ライバルであっても、各企業がオープンになってきていると感じます。すべての企業は、この問題を解決する必要があると考えているため、企業間のつながりが強くなっていると思います。


それでも、各企業によって進むスピード感は異なります。当社のような小さなブランドと、大企業では、企業体系も異なるため、一概に言えないと思います。トップの意思で経営判断を下すことができる企業は進捗が早いのではないでしょうか。何かしなければいけないと認識しているものの、まだ動いていない企業も多い印象を受けます。


また、最近では、給料よりも、企業が社会にどのように貢献するかという観点で入社している若い世代の人々は、環境問題を解決する必要性を感じており、いい意味での突き上げを感じます。この意味で、社会の潮流は大きく変わってきており、課題は、どのようにして皆で協力して進むべき道を見出し、取り組んでいくかにあると思います。


そのほかには、先進国の人たちはある程度生活が保障されているため、脱炭素に向けた進展が比較的進みやすいということがあります。一方、途上国では国内に多くの問題があり、人口も増加しているため、経済的発展と同時に脱炭素を進める必要があります。ですから、日本の事例をそのままコピーしても、途上国に適用することができないということがあります。このような点も今後の課題になると思います。



そのような課題に対して、どのような解決策があると考えていますか?

一つはパートナーシップをどんどん増やしていくことです。先ほども述べたように、同じ課題解決に向けて、みんながオープンに横のつながりを広げて、課題に取り組んでいくことは大切だと思います。また、お客さんの買い物意識を変えていく必要もあると思います。例えば、食品のカロリーを例にすると、コンビニでお弁当を買うときには、カロリーは見ますが、カロリーが低いからといって商品を買わないと思います。やはり、美味しいものを買いますよね。その中で、おいしくてカロリーの低いものは比較的買ってもらいやすいのかと思っています。同じように、商品にカーボンフットプリントを記載して、同じ商品だったらカーボンフットプリントが低い方を買おうと思っていただけたら良いと思います。



目標に、カーボンプットプリントを0にしようとありますが、どのようにこの目標を来てたのでしょうか。また、現在の状況はどのような感じでしょうか。

現在、毎年10-15%の割合で減少していけば目標を達成できる計算になっており、そのペースで進んでいます。ただし、将来的にはより厳しい状況が出てくると考えています。

その中で、最近は再生型農業に力を入れています。当社の商品には羊のウールが使われており、羊が排出するCO2を減らすために、ニュージーランドの農家さんと協力して、羊を育てるための草や土を豊かにし、全体のCO2排出量を減らす取り組みをしています。

また、ムーンショットというプロジェクトでは、メタンを吸収する素材を使用してプラスチックに近いファブリックを作ることに取り組んでいます。これにより、素材自体がカーボンネガティブなものになるため、環境に対してプラスの影響を与えることができると考えています。









最後に、脱炭素化に向けて取り組む企業や個人に向けて、メッセージをお願いします。

この分野は僕はすごいチャンスだと思っています。

2000年頃にインターネットサービスが登場し、新しいブライザやファイル変換サービス、iTunesなど多くのイノベーションが生まれた時代に似ていると感じています。


なぜなら、この分野は課題が大きく、既に全世界で取り組まなければならない問題があるからです。そう思うと、この分野では多くのイノベーションや創造、破壊が起こることを予想できます。ビジネスにどう乗せていくかは大きな課題ですが、全体的にはとてもチャンスがある時期になっています。また、一人で解決しようとするのではなく、仲間を見つけて一緒に問題に取り組むことが重要です。情報を共有し合って、協力して取り組んでいくことが必要です。



注:

1* Bコーポレーション:B Corporation(Bコーポレーション)は、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点から、企業の社会的責任を認定する非営利団体です。